猿の気まぐれ日記

こんにちは!このブログでは、ボイトレの知識やカウンセリング の知識や知恵、本の感想などを気まぐれで綴ります。

猿の読書日記「伊坂幸太郎・砂漠」

今回の猿の読書日記は、伊坂幸太郎の「砂漠」です。

この小説は、主に大学生の日常や、大学生になってからの性格の変化(大学デビュー)をえがきつつも、そこに少し「超能力」であったり、「詐欺グループ」であるような非日常要素をたしたような内容になっています。

紹介する小説の「砂漠」で一番自分が面白いなと思った描写は、主人公である北村の人間性の変化です。北村は、北村の親友的存在になる鳥井に、「お前どうせ鳥瞰型だろ。」みたいなことを大学の最初の飲み会で言われてしまいます。鳥瞰型とは、目の前のことしか見えない近視眼タイプと違って、全体を眺め、周囲を見下しているようなタイプの人です。しかし北村はそれから、友情や恋愛、遊びなど目の前のことに興味を持ち、そこに必死になっていきます。これは、こうなることが全員にとって正解というわけでもありませんが、いわゆる陰キャラから陽キャラの雰囲気に近づいていくようなもので、その感覚がこの小説を読んで疑似体験できるのではないかと思います。この小説ではいろいろな登場人物の掛け合いの中で、大学生が大学生活中に経験するような性格の変化や、リアルな大学生の生活面や心の中での人間模様がえがかれています。

しかしこの小説は、彼女と別れたばかりの人にはいろいろつらいかもしれません...

なぜならこの小説の登場人物たちは、みんなバリバリリア充アピールをしてくるような描写がたくさんあります。自分はちょうどふられたばかりの時にこの小説を読んでいたので、いろんな意味で撃沈しました(笑)

この小説では、人間の温かみを感じられるシーンはありつつも、最後は暗雲の立ち込めるような文章で終わっています。それは、大学生活が終わった後に待ち受ける社会の厳しさを暗示させるような文章です。大学の卒業式のシーンでこの小説はしめられますが、伊坂幸太郎さんはなぜ最後に社会をこの小説のタイトルである「砂漠」に例え、暗雲立ち込めるラストにしたのかということを考えるのもいいかもしれませんね。